安静呼吸時における家鶏の胸部, 腹部および背部にある諸筋の筋電図を, 機械的呼吸曲線を指標とし, 電磁オッシログラフで記録し, 筋と呼吸運動との関係を明らかにした. 誘導電極には, 同心型針電極, あるいは GESELL が用いたいわゆる floating electrode を使用し, 単一 NMU を分離導出した. さらに単一 NMU の放電間隔を測定し, interval diagram を描き, 放電パターンについて検討を加えた. 1) 肋間筋のうち, 第2~4外肋間筋, 内肋間筋の肋軟骨部, および第1, 2内肋間筋の骨部では吸息相に同期した放電が見られた. その他の肋間筋, すなわち第5, 6外肋間筋, 肋軟骨部の筋, および第3肋骨腔以後の内肋間筋の骨部は, 呼息筋であった, ただし, 第5外肋間筋と, この部の内肋間筋の肋軟骨部では, 個体によって, 吸息時に放電が見られることもあれば, また吸息・呼息の両相において, 交互に放電が観察される例もあった. 2) 腹筋は, いずれも積極的に呼息運動に参加する呼息筋であった. 斜角筋, 胸横筋,
肋骨挙筋
, 鈎突肋筋からは, 吸息時に放電が見られた. 広背筋, 憎帽筋, 菱形筋など, 背部にあるものでは, 一般に, 呼息相に同期した放電の出現または増加が認められた. 3) 以上の諸筋の interval diagram から示される放電型は, GESELL のいう slowly augmenting pattern である. 多くの呼息筋もこの型を示すことは, 他の動物と異なる家鶏呼吸筋の特微と考えられる. なお肋間にある呼息筋からは,まれに steady-state pattern も検出された. 放電頻度には, かなり広範囲にわたる変動が見られた. 多くの場合, これは1秒5~40回の範囲にあった. 吸息または呼息, いずれかの相に現われる spike の数は, 7~40であった. 4) 家鶏で呼吸運動に関与する諸筋から得られた interval diagram は, 4つの型に分類することができる. A型は, 筋の収縮期間中, 放電間隔が次第に短縮して行く典型的な slowly augmenting pattern である. B型は, 最初の1~2個の放電間隔が短縮しているが, その後はA型と同様の経過をとる型である. C型は,これに反して, 最後の1~2個の放電間隔がやや廷長している型である. B型とC型は, A型の変形と考えられるが, 本実験では, かなり頻繁に認められた. D型は steady-state pattern である(Fig. 7).
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