症例は68歳の女性,進行胃癌に対してリンパ郭清を伴う胃全摘術を施行し,術直後より重症急性膵炎を発症し,膵床ドレナージ,総胆管のT-チューブドレナージを施行した. T-tubeよりの造影で,膵・胆管合流異常が明らかとなった.急性膵炎発症準備状態ともいえる病態に胃全摘の際の膵授動に伴う膵の過分泌状態,十二指腸内圧上昇に伴う胆道内圧,膵管内圧の上昇が加重的に作用し,重症化したものと考えられた.膵・胆管合流異常を伴う症例に胃切除術を施行する際には,重症急性膵炎の発症を常に念頭におくべきであり,手術中の膵臓への愛護的な操作,十二指腸内圧の上昇を防ぐ様に吻合に注意を払い,郭清が広範囲に及ぶ時には膵・胆管合流異常に対して,胆道再建術を付加することも必要と考えられた.
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