痔瘻はとくに, 術後に再発・括約不全をきたしやすいという点で治療が困難な肛門疾患である. この実態をみるため, われわれは平成2年1月から12月に手術を行い, 術後5年以上経った204例について長期成績を分析した. 型別にはI型12例, IIL型141例, IIH型20例, III型25例, IV型6例となっている. 術式はI型および後方のIIL型は開放術, 側方・前方のIIL型, IIH型, III型, IV型は原則として瘻管をくり抜き, 内方の原発口部を閉鎖する括約筋温存術を行った. その結果をみると, 治癒期間はI型の平均19.1日からIV型の59.2日, 全平均23.6日であった. 愁訴は術前の387症状から術後73へと減少しているものの, 継続している症状もある. その中でも肛門痛15.7%, 分泌液6.9%, 腫脹3.4%, 硬結2.0%が術後残っている. したがって全症例の45%におよぶ痔核などの合併肛門疾患は, 極力痔瘻手術時に根治するとともに正常組織を可及的に温存し, 愛護的手術を行うことが大切である. 明らかな括約不全症状はわずか4例2.0%にすぎず, また型が深くなるにつれて増大する傾向もない. IIH型, III型, IV型で術前の静止圧, 随意圧は低下し, 術後は正常へ回復している. しかしIV型においては回復せず, 手術の括約筋への影響が大きく, 術後も回復不能であることを示している. 再発は全体204例中6例, IIL型4例, III型2例で, 短期再発1例, 長期再発5例となっている. 再発様式は同型のものが4例で, あとIIL型2例で深い型への再発があった. 再発の原因は術中の見逃し1例, まったく別の型への再発1例, 原発口処置不十分1例, 原発膿瘍残存3例であった. これら再発の4例に括約筋温存術, 2例に開放術を行い, 全例再々発はなかった.
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