目的 : 本研究の目的は, 化学–機械的齲蝕除去剤と手用切削器具を併用して齲蝕象牙質の除去を行った後の窩洞面に, グラスアイオノマーセメントを用いて修復した際の歯質とセメント間の接着状態を確認することである.
材料と方法 : 本研究では歯頸部に慢性齲蝕を有するヒト抜去永久歯25本を使用した. 齲蝕象牙質表面に塗布する化学–機械的齲蝕除去剤として10%ブロメラインと20%リモネンを配合した試作薬剤を使用し, スプーンエキスカベーターにて齲蝕除去を行った. 齲蝕除去後の窩洞面は, 実体顕微鏡にて問題がないことを確認した後に試料を各5本ずつの5グループに分類した. それぞれのグループの窩洞は, 従来型グラスアイオノマーセメントとしてフジⅨGPエクストラを, レジン添加型グラスアイオノマーセメントとしてハイ-ボンドレジグラス, レジン系グラスアイオノマーセメントとしてジーセム, アドシールドRM, イオノタイト–Fを用いて充塡した. その後10,000回サーマルサイクリングを施行した後に, 辺縁漏洩試験を行った. 最終的にすべての試料はダイヤモンドディスクにより分割し, 走査電子顕微鏡にて観察した.
結果 : 辺縁漏洩試験の結果では, 漏洩が全くない試料は確認されなかった. 漏洩状態はフジⅨGPエクストラがすべての試料のなかで顕著で, 残りの4種類のグラスアイオノマーセメントは若干の漏洩状態の差異が認められるものの, 近似した良好な結果を示した. 走査電子顕微鏡観察でもフジⅨGPエクストラではセメントと歯質の境界に空隙を生じている試料が多くみられたのに対し, 残りの4種類のグラスアイオノマーセメントでは歯質とのギャップは顕著には観察されなかった.
結論 : 今回の結果から, 化学–機械的齲蝕除去剤と手用切削器具を用いた齲蝕除去窩洞の修復処置に対しては, 従来型のグラスアイオノマーセメントよりレジン系グラスアイオノマーセメントを選択することが推奨される.
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