複雑,微妙な口唇裂,口蓋裂の形成手術を乳幼児に行うには,安全性の高い気管内挿管法による吸入麻酔が不可欠である.一方,麻酔医の立場からすると,口腔とその隣接部位に奇形があり,上気道の一部が手術野となることからいくつかの問題がおこってくる.すなわち,麻酔の導入時,手術時,術後を通じていかに気道を確保するかという問題と,この気道を確保した上で術者に操作のしやすい術野を提浜し,かつ術者,麻酔医,看護婦が互に邪魔にならぬためにはどうするかという問題などである.
我々は,これらのことを念頭におき,麻酔の導入法,気管内チューブとその固定法,麻酔医,麻酔器の位置などについて工夫し,ほぼ一定の方式で2,000例以上の口唇裂,口蓋裂形成手術に全身麻酔を行い,ほぼ満足すべき結果を得た.その実際について述べ,かつ反省を加えた.
抄録全体を表示