1)
Gc遺伝子を有する緑繭種, 遺伝子型
gaGbなる白血白繭種,
gaGbなる白血白繭種及び
gaGbなる笹繭種の間で相互に絹糸腺の移植を行い,
Gc,
Ga及び
Gb遺伝子の生理的作用の関係を明らかにし, また緑繭色素と笹繭色素との関係を明らかにした。
2) 緑繭種の絹糸腺は
gaGb蚕の血液中で着色した。
gaGb蚕の血液中には笹繭色素原物質がない故, この着色は緑繭色素によるものと考えられる。則ち,
gaGb蚕の血液中には緑繭色素原物質が存在する。
3) 故に, 緑繭色素原物質を消化管において吸収し, 体内で緑繭色素を造成してゆくまでの作用を司る遺伝子の存在が考えられる。
4) 緑繭種の絹糸腺は
gaGb蚕及び笹繭種蚕の血液中では着色した。しかしこれは緑繭色素によるのか笹繭色素によるかは不明である。
5)
gaGbなる絹糸腺を緑繭種大造及びYGに移植したら不着色であつた。これは大造及びYGの血液中には笹繭色素原物質が存在しないことを示し, また
gaGbわなる絹糸腺は緑繭色素原物質を吸収透過する作用あるいは緑繭色素を造成する作用がないと考えられる。
6)
gaGbなる絹糸腺を緑繭種青白に移植したら着色した。これは青白の血液中には笹繭色素原物質が存在すること, 即ち青白の消化管は笹繭色素原物質を吸収透過し且つ体内で笹繭色素を造成してゆく作用があると考えられ, 橋本 (1951) の推察したように青白はGbを有するものと考えられる。
7)
gaGbなる絹糸腺を緑繭種蚕児に移植したら着色しなかつた。これは
gaGbなる絹糸腺は緑繭色素原物質を吸収透過する作用がないかまたは体内で緑繭色素を造成する作用がないものと考えられる。
8) 結局, 奥 (1934) の化学実験の結果明らかにされたように, 緑繭色素と笹繭色素とは異る色素であることは確かである。
9) また,
Ga及び
Gb遺伝子は絹糸腺において緑繭色素原物質を吸収透過し, 緑繭色素を造成することに対しては何らの作用もなく, また
Gc遺伝子は消化管において緑繭色素原物質を吸収し, 体内で緑繭色素を造成してゆくことに関しては何らの作用ももたないと云える。
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