歯科医師,歯科衛生士そして小児自身の母親,三者の顔写真を一枚のテスト画像として小児に提示したときの小児の眼球運動を測定,分析した. そこで母
親の顔
写真に視線を走査した(走査群),走査しない(非走査群)で被験者を二分し,眼球運動の分析結果を比較検討した. 加えて走査群と非走査群では,どのような性格傾向があるか調べるため,林式数量化II類による多変量解析を行い,高木・坂本幼児児童性格診断検査(T・S検査)の結果との関連性を検討し,以下の結論を得た.
1.初回停留部位は,歯科医師が最も多く,その他,母親,歯科衛生士の順であった.
2.停留時間が長い順に歯科医師,歯科衛生士,母親そしてその他で,被験者全員の平均は902.7msであつた.
3.停留回数が多い順に歯科医師,歯科衛生士,母親そしてその他で,被験者全員の平均は7.2回であった.
4.視線の走査パターンで,走査群は51.1%,非走査群は48.9%であった.
5.走査群は有意水準5%で歯科衛生士への停留時間が有意に長かった. 非走査群は,有意水準5%で歯科医師への停留時間が有意に長く,有意水準1%で停留回数が走査群より有意に多かった.
6.数量化II類による分析は,相関比0.453,判別的中率66.7%であった. T・S検査で走査群と非走査群との判別に強く影響を与える偏相関係数が0.200以上の項目は,神経質,個人的安定度,攻撃性であった.
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