生態学的機能の種間の相違は競争種共存機構の一つである。つまり競争能力と他の形質との間にトレードオフがあるとき共存可能であるという。この理論は形質の
進化
を考慮しても保たれるのだろうか。 生活史形質パラメータは自然
選択
の対象となりうる。鳥類、魚類等の生物において無機的環境を
選択因子とし生活史形質が進化
しうると示唆され、また種間相互作用を
選択
因子とする形質
進化
も理論的に可能である。こうした形質
進化は競争相互作用を選択
因子としても起こるかもしれない。 競争相互作用を原動力とする生活史形質
進化
は共存にどう影響するのか。近年、生態時間に見られる様々な種間相互作用を
進化
時間の考慮により包括的に理解しようと試みられている。多くの競争相互作用系に着目した研究の興味対象は、形質置換のような競争に直接関わる形質の競争相互作用を原動力とする
進化
にある。それらの研究では競争形質の
進化
(形質置換)により共存が予測されるが、競争に直接関わらなくとも競争相互作用を原動力として
進化
する生活史形質も考えられる。そうした生活史形質
進化
は共存にどう影響するのか。 我々は成熟率を自然
選択
の対象と考え、種間競争を原動力とする成熟率
進化
が共存・排他にいかなる影響を与えるかを数理モデルにより調べた。成熟率は期待成熟齢を通し体サイズ、産子数に影響すると考えた。成熟率の
進化
を考慮しない場合、競争優位種の成熟率が高すぎ小型で成熟するとき、または成熟率が低すぎ成熟個体が少ないとき共存可能であることが分かった。しかし成熟率の
進化
を考えると、むしろこのトレードオフ的共存状態が種間の成熟率への
選択
圧の相違を生み出し、優位種に比べ劣位種の急速な形質
進化
を引き起こし優位種の絶滅を生じさせる可能性があることを発見した。この非直感的結末を導く機構を種間の形質への
選択
圧の相違と生活史構造の相違から説明する。
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