本稿は、沖縄における米軍基地と、軍事性暴力に焦点を当てる。平時の沖縄で人々は、基地被害と隣り合わせで生活している。特に重大な問題の1つが軍事性暴力である。
沖縄では、戦時から戦後の現在も軍事性暴力が起こり続けている。過去の「慰安婦」問題と現代の沖縄における軍事性暴力の間は繋がっている。
日本政府が「慰安婦」問題の責任に向き合い、真摯に対応してこなかったことが、現代における沖縄での軍事性暴力の軽視につながっている。「慰安婦」問題をはじめとする戦時の性暴力に関する問題が十分に議論されず、解決されてこなかった結果として、沖縄での米軍基地周辺での性暴力を軽視し、被害者に沈黙を強いる状況が残っているのではないか。
軍事性暴力を含む基地被害が、基地が偏在する沖縄に多く発生する。軍隊の暴力性は、根深い性差別、民族差別、植民地差別に基づいて、沖縄の弱い立場の女性・少女たちに向けられる。軍事性暴力は、深刻な人権問題であり、安全保障を優先すべき問題ではない。本稿では、日米地位協定の不平等条項の1つである被疑者の身柄引き渡し規定、その運用改善、米軍犯罪の日米間の通報体制、米軍による対策の問題点にも触れ、それらが遅々として解決していないことを示す。
軍事力の強化は、軍隊の持つ暴力性や、軍隊を支える家父長制的な観念、性差別、民族差別、植民地差別と密接であり、駐留受け入れ地域の日常の平和をないがしろにする危険性がある。
抄録全体を表示