症例は徐脈性不整脈の家族歴を有する24歳男性.2015年4月左片麻痺が出現し当院に救急搬送.来院時,意識障害,左片麻痺,右共同偏視,構音障害を認め,脳MRIで右中大脳動脈領域に広範な梗塞所見があったことから心原性脳塞栓症と診断の上,緊急入院となった.来院時の心電図ではP波を認めず,心拍数69/分の接合部調律であったが,入院後に高度の徐脈と数秒間の心停止が頻回に出現したため,第5病日に一時的ペースメーカ治療を施行した.心臓電気生理学的検査で,右房内の8箇所をmappingしたが,いずれの部位にても心房電位は記録されず,同部位からの高出力ペーシングでも心房筋は捕捉されなかったこと,12誘導心電図所見,心エコー所見などから心房静止と診断し,抗凝固療法および恒久的ペースメーカ移植術を施行した.若年者の心房静止例であること,徐脈性不整脈の家族歴を有することから遺伝性不整脈を疑い,遺伝子解析を行ったところ,本人と父親に共通する遺伝子変異を認めた.
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