かつて、商家をはじめ、山村・漁村などにおいて広く用いられてきた「家印」などの日本の伝統的な「しるし(印)」は、きわめて重要な生活文化・地域資源のひとつである。しかしながら、今日では、一部の老舗・旧家などで継承されているに過ぎず、他の多くの伝統文化と同様、急速に消失しつつある。本調査・研究は、「醸造の町」として知られる新潟県長岡市摂田屋地域を代表する老舗6社を対象に取り上げ、文献調査・現地調査に基づき、多様な形で存在した家印(商標)・屋号の特質を把握するとともに、その将来のより望ましいあり方を考察することを目的とした。調査・考察の結果、各社がもっている家印(商標)・屋号は摂田屋地域、および各社の特徴を表すアイデンティティー形成の重要な要素であることが判明した。また、現在、古い家印は存在するもののあまり活用されなくなっており、それらの今日的価値を再認識し、各社が伝統のしるし、文化の継承の大切さ、今日の地域づくりのニーズに対応するその活用の重要性などを認織した一連のデザイン提案を示すことができた。
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