1.はじめに
上越教育大学の志村喬教授を研究代表者とするグループは,どのような地理教育が「Powerful Geography(力強い地理)」なのかに関連して,高等学校における地理学習が学習者にどのように評価され,進路選択にどのように作用したのかを調査した。そのインタビュー調査対象者として,筆者が勤務する神戸大学附属中等教育学校の卒業生が選ばれた。本校は2013(平成25)年度より,文部科学省から研究
開発学
校の指定を受け,途中で科目名の変更はあったが,4年生(高校1年生に該当)全員に,「地理総合」を実施してきた。現在,大学に通っているほとんどの学生は,平成30年告示の高等学校学習指導要領実施前に高校生であったため。高等学校における地理学習経験が無い場合もあり得る。しかし,本校生は全員が,地理を学んでいるため,調査対象者として適していた。調査対象者は,2018(平成30)年度に,「地理総合」を履修した。そこで,実践記録から,調査対象者がどのように「地理総合」を評価し,授業者がどのように「地理総合」を実践してきたのかについて報告する。
2.実践記録から
研究
開発学
校は,実績報告の中で,研究開発の結果及びその分析について,資料・根拠に基づいて実証的に記述する必要があるため,毎年,生徒意識調査を行ってきた。「地理総合」実施学年の,4月,10月,3月に,中学校社会科との比較や,「地理総合」の学びについて,さらに,6学年(高校3年に該当)に,「地理総合」の学びが大学での学習に役立つかなどについて調査した。
4学年でのおもな調査項目は,以下の通りである。
①中学校社会科と「地理総合」の比較
②「地理総合」学習前の期待と学習後の結果
③中学校社会科と「地理総合」の感想
6学年でのおもな調査項目は,以下の通りである。
①「地理総合」は,生徒参加型であったか
②「地理総合」は,大学などでの学びに役立つか
③「地理総合」は,社会で必要な力が身についたか
3.「地理総合」の実践について
研究
開発学
校は,専門的見地から指導助言,評価を受けるとともに,公開授業などを開催し,他校における研究に資するよう,情報提供を行う必要がある。そこで,毎年,授業公開し,指導助言をふまえ,「地理総合」を改善してきた。そのため,授業者は,生徒の資質・能力をどのように育成するのかとともに,どのような授業を見てもらうべきかという,2つの命題を抱えながら授業実践してきた。
3.おわりに
学習者が授業をどのように感じるかは,授業者がどのように実践しようとしてきたかに,大きな影響を受ける。学習内容を伝えたかったのか,学習活動を深めたかったのか,どのような資質・能力を伸ばしたかったのかなどについて,年間の見通しをもって授業実践することが,これからの授業実践ではよりいっそう大切になってくる。
文 献
神戸大学附属中等教育学校 2014.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理基礎」「歴史基礎」実施報告書vol.1』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2015.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理基礎」「歴史基礎」実施報告書vol.2』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2016.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理基礎」「歴史基礎」実施報告書Vol.3』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2017.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理基礎」「歴史基礎」実施報告書Vol.4』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2018.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理総合」「歴史総合」実施報告書vol.1』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2019.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理総合」「歴史総合」実施報告書vol.2』神戸大学附属中等教育学校.
神戸大学附属中等教育学校 2020.『文部科学省指定研究
開発学
校高等学校地理歴史科「地理総合」「歴史総合」実施報告書Vol.3』神戸大学附属中等教育学校.
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