口腔清潔度の指標としては,歯面への歯垢の付着度を測定する方法が一般的であるが,診査や記録等の人材的,時間的負担を要することから,集団歯科健診で用いられることは少ない.集団歯科健診においてう蝕や歯周疾患,口臭症のリスクを評価するために,簡便かつ有効な口腔清潔度の評価法の開発が望まれている.リアルタイム定量PCR(qPCR)法による唾液中の総細菌数の測定は,検体の採取や保管が容易で多検体の一括処理が可能であることから,本目的に合致する有望な測定法であると考えられる.本研究では,qPCR法を用いた唾液中の総細菌数の測定が口腔清潔度の評価法として使用できるかどうか検討を行った.5名のボランティアから,ブラッシング中断時と再開後の2回,刺激唾液を採取し,唾液中の総細菌数をqPCR法により測定したところ,Debris Index,O'LearyのPCR値との間に相関は示されなかったものの,ブラッシング再開後では,中断時に比べ,有意に減少した.81名の被験者から4ヵ月の間隔を空けて2回刺激唾液を採取し,唾液中の総細菌数をqPCR法により測定したところ,前後の間に有意な正の相関を認めた.以上の結果より,qPCR法によって唾液中の総細菌数を測定することが可能であることが示された.本法は非常に簡便であることから,今後,口腔清潔度を検討する分野において応用できる可能性が考えられる.
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