透明濃縮果汁と脱脂乳または発酵脱脂乳,砂糖を主原料とした果汁添加濃厚乳飲料の保存性を検討してつぎの結論をえた。
1. 微生物学的安定性は85℃, 20分程度の保持殺菌でえられる。
2. 市販透明濃縮果汁中のコロイドは乳蛋白質と結合し,保存中に粗大となり,飲用時稀釈すると沈澱をみる。
3. 凝集沈澱物の発生に対する縮合リン酸塩の効果は添加直後はあるが,これを保存すると漸時その効力を失なう。また市販propyleneglycolalginate (P.G.A.)はそれ自体酸性で不溶物を作り,製品の沈澱因子となる。
4. 使用する果汁中のペクチン含量は製品の安定性にいちじるしい関係をもち,低含量ほど良好である。
5. ペクチン残量の少ない果汁をもちいたものは安定剤を全然添加せず,長期間安定であるが,殺菌直後または高温保存後,柔毛状物質の発生をみる。これは機械的振盪によって防止できるが,振盪は殺菌1日後,糖度はBx 57以上とするとよい。
終りに終始御指導を賜わった研究所長 高野玉吉博土研究課長 三野和雄氏に謝意を表します。また微生物試験をして下さった東京技術部 浮島光威博土,相馬一夫氏にお礼申し上げます。
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