本研究は,美術教育における漫画の扱い方について,鑑賞教育への導入という視点から提案し,西洋の中世美術の鑑賞へ応用することを検討,実践し,その有用性を検証するものである。
はじめに,漫画を構築する基本的な要素は西洋で発達するが,その根底にコマ割りやフキダシといった技法の片鱗が見られる西洋の中世美術があること,幕末から明治期にかけて日本の漫画の土壌となるような文化と融合,発展し,現在のストーリーマンガに連なることを述べた。
次に,西洋中世美術と漫画との関わりを明らかにし,漫画の技法の歴史を鑑賞の導入手段とし,さらに漫画を描かせることにより,西洋の中世美術をより親しみ,作品を深く鑑賞するための授業を考案した。筆者が作成したワークシートを用いて現場の教員と共同で実践することで,授業案やワークシートの検証を行い,漫画および漫画の読み書き能力が鑑賞の糸口となり,より深い鑑賞につながることを示した。
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