抄録
本稿は,美術鑑賞時において小学校1年生と大学生が作品から何を感受するのか,それはどのような思考によってなされるのかについて明らかにするものである。研究は,小学校1年生と大学生に行った記述式の鑑賞アンケートで得た情報を分析して行った。アンケートは,作品の感受内容を作品の任意の場所に記述するものである。こうして収集した記述内容と記述場所の傾向を数値化し,小学校3・4年生と中学生の同様の調査と比較した。その結果,小学校1年生は作品内容の感受を作品の内側へ記述することが多く,しかも約4割の児童が自分の分身を作中に描き込んでおり,強い観念的思考が見受けられた。一方,大学生は感受内容や記述場所に極端な偏りは見られず,観念的思考も現実的思考も必要に応じて用いて鑑賞していると見られる。