近年新しく開発された蛋白分画法の中で, ディスク電気泳動法は, 検体が微量ですみ, 分離能および再現性もすぐれ, 稀薄蛋白液の泳動にも前処置に濃縮を必要としない等の利点を有している. 本法による髄液蛋白分画の研究は, 従来, 使用髄液量を一定とした泳動実験の報告を見るのみであり, 使用髄液蛋白量を一定とした論文は, 本邦にはみあたらない. 我々は泳動する蛋白量を一定にして, 総計386検体の髄液を泳動し, そのうち122検体を疾患別に検討し, 以下に述べる成績を得た.
1) 髄液のディスク電気泳動法において, 使用蛋白量を一定 (約200μg) とすることによって, 泳動像およびその蛋白分画相対濃度百分率を, 各検体間でより正確に比較することができた.
2) 蛋白分画を大きく5区域にわけた. 正常髄液23検体の各分画相対濃度百分率の平均値および標準偏差は, Pre.-zone: 10.9±2.7%, Alb.-zone: 40.3±5.8%, A-zone: 13.5±1.6%, B-zone: 19.2±3.9%,
G
-
zone
: 16.1±2.6%であった.
G
-
zone
の意義については免疫グロブリンとの関係を考察した.
3) 疾患により有意の増減 (危険率5%) を認めた分画は, 髄膜炎, 神経梅毒, 脳硬塞, 脳腫瘍, 多発性硬化症および椎間板ヘルニアのいずれの疾患でも, 髄液蛋白量が40mg/d
l以上のときは, Pre.-zone の減少と
G
-
zone
の増加を認めた. 椎間板ヘルニアでは常にA-zone の増加があり, 髄液蛋白量が40mg/d
l以下のとき Alb-zone の減少を認めた. 脳硬塞では, 常に Pre.-zone が減少し, 髄液蛋白量40mg/d
l以下のときA-zone は増加した. 髄液蛋白量が40mg/d
l以下でも
G
-
zone
の増加を認めた疾患は, 多発性硬化症, 脳腫瘍, 椎間板ヘルニアであった.
抄録全体を表示