母児免疫はアロ移植片たる胎児の生着が寛容される現象であり, 経胎盤的に有核細胞の交換があることが知られており, 母児間の特殊な免疫寛容/不応状態が推測されている. 母児間相互の不適合HLA抗原に対して「現象的適合性」が得られていることになり, 母児はハプロ不一致でもHLAミスマッチ移植のよい選択肢になるとされる.
我々は血液学的にHighリスクの10症例, Standardリスクの3症例に対し, Tリンパ球を除去せずにHLA不一致NIMA相補的血縁者間造血幹細胞移植を実施し, 13例中11例に生着を認めた. 生着を認めた11例のうち8例 (73%) は急性GVHDを発症せず, 3例 (27%) にGrade IIの急性GVHDを発症したが, それらの症例もmPSL投与でコントロール可能であった. また, 4例に慢性GVHD, Extensiveタイプを発症した. Highリスクの3症例が再発し, 死因となった.
HLA2-3座不適合ドナーであってもコントロール可能なGVHDの範囲であり, また, 現在5例 (38%) が生存中 (6年生存率はHighリスク27%, Standardリスク67%) であり, 従来のHLA一致血縁者間や非血縁者間骨髄移植の成績とほぼ同等である可能性を示した. 血縁者間または日本骨髄バンクにHLA一致のドナーが存在せず, 移植を急ぐ患者にはHLA不一致NIMA相補的関係となる血縁者は十分にドナーとして適応と考えられる.
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