ムササビの喉頭蓋の喉頭面の上皮はその舌面のものよりも遙かに背の低い重層扁平上皮から成るが, その正中部丈は氈毛上皮から成る. 味蕾は舌面上皮のみに少量に発見される. この部の粘膜では混合腺は良好な発達を示すが, 淋巴集合は極めて少い.
喉頭室は甚だ大きい喉頭嚢を作る. 前方は甲状軟骨, 上方は舌骨, 下方は気管上部に達する. その粘膜は概ね1列性立方上皮と狭い固有膜とから成る.
声皺襞は概ね2列性扁平上皮と狭い固有膜とから成る. 声門の軟骨間部の前1/3は同様2列性扁平上皮で蔽われるが, 後2/3は2-3列性氈毛上皮で蔽われ, 固有膜も増大, 中に混合腺を含む. 声門より下方気管に至るまでの粘膜は前者同様な組織構成を示す.
ムササビの喉頭粘膜も人や2-3動物に於けると同様に知覚線維に恵まれているが, 粘膜下膜及び固有膜神経叢の劣勢な形成に伴ってその量も又知覚終末の構成も人等に於けるよりは遙かに劣勢である.
この喉頭粘膜に見られる知覚終末は非分岐性及び単純性分岐終末として上皮下及び上皮内に形成される. 喉頭嚢粘膜では最単純の非分岐性終末を而も散在性に見るに過ぎず, 従ってここでは知覚神経分布は甚だ劣勢である. 唯喉頭室の入口附近では単純性分岐性終末も稀ならず発見される.
喉頭蓋喉頭面の粘膜は喉頭粘膜の中では最も知覚線維に富む. そして稍々複雑な分岐性終末も所々に発見される. 特に正中部で然りである. 然しこの部の終末は一般般に中等大又は細い線維に由来する. 反之その周辺部では前者に於けるよりも終末の量は少いが, 太い線維に由来する分岐性終末も発見される.
喉頭蓋舌面の粘膜には知覚線維の進入は劣勢, その終末様式も甚だ単純, 又この部にのみ見られる味蕾に対する知覚神経分布も甚だ劣勢である.
声皺襞にも極く少量の知覚神経の進入を見る. その終末は非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされ, 又稀ならず上皮内線維も発見される. 声門から下方の粘膜にも知覚終末が見られるが, 之は下方に向って愈々劣勢を示す.
抄録全体を表示