人口減少社会を迎えるわが国において,豊かな社会を継続するために,生産性の向上は喫緊の課題である。そして,生産性の向上は技術革新によって成し得るが,技術革新は研究開発活動によってもたらされる。従来研究開発は多様化が重要と見なされているが,本稿では研究開発投資の多角化と収益性の関係を,多角化を定量的な多角化度,定性的な多角化戦略区分から捉え,個別
企業
のパネル・データを用いることにより実証的に分析する。まず,多角化度の推移を見ると全体として大きな変化は示されなかったが,内需業種の一角は低下する等,業種別では変化が見られ,また多角化度の水準についてもハイテクは高く,内需業種は低く業種別に特徴が示された。そして,多角化戦略区分の比率の推移を見ると,研究開発投資は多角化とともに行われることが多く,更に多角化は得意な分野の周辺で進められることが多いとの示唆が得られた。また,多角化が進むほど収益性が低いことが示され,研究開発投資における「選択と集中」や,見えざる
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の資質を高めることが重要であるとの示唆が得られる。
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