維持透析患者において, 唾液Na/K比が腎外K調節の指標として有用か否か調べる目的で, 無尿の血液透析患者24名につき3か月おきに3回, 透析開始直前に唾液Na, K, 血清K値, 唾液および血漿アルドステロンを測定した. 維持透析患者の唾液Na, K濃度はそれぞれ21.3±2.2, 30.2±3.2mEq/
lで, 健常人の唾液Na, K濃度, 11.5±6.4 (P<0.05) 22.5±1.7 (P<0.05) mEq/
lに比し有意に高値であった. 維持透析患者で, 唾液K濃度と血清K値との間には相関がみられなかったが, 唾液Na/K比と血清K値との間には有意な負の相関が認められた (r=-0.43, p<0.01). 維持透析患者の唾液アルドステロン濃度は23.8±9.0ng/d
lと高値を示し, 血漿アルドステロン値11ng/d
l以上の症例で血漿アルドステロン値と有意な正の相関を示した (r=0.78, p<0.01). また, 唾液アルドステロン濃度と唾液Na/K比とは有意な負の相関を示した (r=-0.47, p<0.01). Fludrocortisone投与により, 血清K値の有意な低下とともに, 唾液Na/K比は有意に低下し, その低下は投与量に依存する傾向がみられた. 以上の結果は, 1) 維持透析患者の唾液Na/K比が, 血清K値の上昇に伴って低下すること, 2) その機序の少なくとも一部はアルドステロンを介することを示唆している. したがって, 唾液Na/K比は腎外K調節の指標として有用であると考えられる.
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