(目的) 2003年4月より実施される高等学校学習指導要領において、家庭総合では、「生活の科学と文化」という項目が位置づけられている。この中で、衣生活に関する学習は、「イ 衣生活の科学と文化」で取り上げられ、生活文化の視点から、衣生活に焦点を当てる学習の可能性が示唆されている。
これまでの先行研究によると、衣生活に関する学習の中でも「着方」に関する学習は、衣服の快適性に伴う内容が中心であった。今後「着方」の内容は社会・文化的な視点も含め、「着ること」の意味について考えさせるような授業を試みる必要がある。 近年、高校生の間では、さまざまな色や形の
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がおしやれの対象となり、ファッションのひとつとなっている。本研究は、このようにファッション化された
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に着目し、「着方」について学ぶ授業プランを開発することを目的とした。
(方法) 本研究では3つの手順を踏むこととした。第一に、今日の高校生の
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着用実態と意識を把握するため、アンケート調査を行った。実施期間は2001年6~7月と10月で、2002名の高校生から回答が得られた。調査結果から、衣生活に関する社会・文化的問題点を明らかにした。第二に、アンケート調査結果および
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を含む服飾史の資料から、授業で取り上げるべき学習要素を選択・決定した。第三に、学習要素に関する教材・資料の選出と作成を試み、授業への提案を行うこととした。本報では第三の手順による結果について報告する。
(結果と考察) 学校制服
着用実態と意識についてのアンケート結果から、?制服指定の有無によって、生徒のファッション観には相違が見られたこと、?服装のジェンダーにとらわれがちであること、?「自分らしさ」を表現しようとしていることが明らかにされた。そこで、男女で異なって推移してきた
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の歴史をふまえ、今日的な望ましい通学服を考えるための授業を検討した。授業の目標と学習の全体的な流れは、以下の通りである。
?制服がファッション化していることを知る。 ・雑誌の制服特集や漫画などに出てくる
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を提示し、制服のファッション化について気づく。
?
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の歴史を知り、理解する。 ・男子の制服と女子の制服との歴史上の違いについて知り、なぜそのような違いが生まれたのか、それぞれに求められてきたものは何なのかを、版装を通して考える。 ※ジェンダー問題に注意をむけさせる。 ・社会背景が服装を変えることを知る。 ・制服が制定された理由を知る。・股装で「自分らしさ」を表現できるということは、歴史上稀であると気づく。※「自分らしさ」と「流行」との違いに気づかせる。
?現在の
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について考える。 ・現在の
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におけるファッション化は、誰が作り上げたものなのかを考える。 ・男女で同じ形(ブレザーなど)になってきている原因について考える。・環境に配慮した制服、学校側が制版のコーディネートの工夫を推奨している例など、現在の
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の実態を調べる。
?今日的な望ましい通学服について考える。・望ましい通学服についてグループで話し合う。、・通学服をデザインし、発表する。 今後は、この授業プランに基づく授業実践を行い、どのような学習効果がみられるか検討したいと考える。
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