【はじめに】
内側半月板損傷は膝関節の疼痛を呈する.しかし,内側半月板(medial meniscus;以下MM)自体に神経線維は少ないため,内側半月板損傷は他の要因が影響している可能性があり,その一つに内側半月板逸脱(medial meniscus extrusion:以下MME)がある.先行研究で内側半月板損傷の荷重時痛は、荷重下MMEの逸脱量が3mm以上で影響すると報告している.本症例も3mm以上の逸脱を認め,逃避性跛行の影響で屈曲拘縮膝を呈していた.そこで,今回,MMに停止腱を持ち,屈曲拘縮膝に関与する半膜様筋(semimembranosus muscle;以下SM)に着目し,
徒手療法
前後の動態変化に伴い可動域,荷重下MMEの逸脱量,荷重時痛がどう変化しているかについて報告する.
【方法】
内側半月板変性断裂と診断なされた屈曲拘縮膝のある女性,年齢60歳代後半,FTA182度,O脚,膝関節伸展可動域-10,5度,荷重時痛NRS10/10,荷重下MMEの逸脱量は3,4mmであり,
徒手療法
前後のSMの動態と荷重下MMEの逸脱量,荷重時痛,膝関節伸展可動域について比較する.超音波画像診断装置(SNiBLE(株)コニカミノルタ社製)を使用し,設定モードはBモード,プローブは12MHzのリニアプローブとした. 設定肢位は腹臥位とし,大腿長30%付近にて半膜様筋の短軸像を撮像し,膝屈曲90°から最大伸展を自動運動で3回実施した.分析には画像解析ソフトImage J(NIH)を用いて,膝関節伸展角度と水平断面像よりSM横断面積を測定した.
【結果】
伸展制限は,
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前-10.5度,荷重下MMEの逸脱量3,4mm,荷重時痛NRS10/10,
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後-3,1度,荷重下MMEの逸脱量1,8mm,荷重時痛NRS0/10と変化し,SMの動態では
徒手療法
前は動態が乏しく,
徒手療法
後は屈曲時から伸展時に表層内側方向へ移動し面積は拡大した.
【結語】
今回,
徒手療法
後は,
徒手療法
前と比較し明らかに動態の変化に伴い膝関節伸展可動域・荷重下MMEの逸脱量・荷重時痛に変化があった. 今後は、患者数を増やし
徒手療法
前後のSMの動態と歩行中のMMEの逸脱量量,KOOS,WOMAC,JOAscoreの変化と評価し比較検討していきたい.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,やまもと整形外科施設長の承認を得て行ったものである.ヘルシンキ宣言に基づき,演題発表を行うにあたりご本人に十分な説明を行い,書面による同意を得た.また,主発表者及び発表責任者には,開示すべき利益相反関係にある企業等はありません.
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