日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢長期入院患者の実態と分析
岩手県沢内病院における調査報告
高橋 龍太郎奥川 幸子松下 哲
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1993 年 30 巻 4 号 p. 301-307

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抄録

地域における唯一の医療施設である村立沢内病院の, 4年間 (昭和63年~平成4年) の長期入院患者の頻度, 年齢分布, 臨床像の特徴を調査した. 全入院患者の平均在院日数は38.0日で76歳から83歳の年齢層で最も長かった. 在院日数100日を超える“長期入院”は4年間に74例 (延べ例数の6.3%) みられ, 重篤または複雑な病態のものが37例, 療養型の長期入院が37例であった. 後者は前者に比べて,より高齢の女性が多くみられた (年齢差, 男女差ともp<0.01). 療養型の長期入院に特徴的な病態としては退行性の“骨・関節疾患”や, 自律神経失調症様の“不定愁訴”が大半を占め, 再入院や冬期の入院が多くそのほとんどは女性であった. 一方, 多発性脳梗塞や, 慢性呼吸器疾患は男性に多くみられた(男女差p<0.01). 治療やケアの差を念頭においた長期入院高齢患者の病態, 重症度の調査が長期入院問題の解決に重要であることが示唆され, とりわけ生活の一部を他人の介護に依存する高齢者の問題をもっと重視する必要があると思われた.

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