園芸学研究
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作物保護
キュウリに病害抵抗性を誘導する熱ショック処理方法の改良と処理装置の試作
芳野 未央子アニ ウィディアストゥティ周 松嬰小谷 博光長谷川 守文佐藤 達雄
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2012 年 11 巻 1 号 p. 121-126

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抄録

病害抵抗性誘導を目的とする熱ショック処理の連続・一斉処理が可能な方法の開発を目指して本研究を行った.材料にキュウリ幼苗を用い,より短時間の処理条件を明らかにするとともに,温湯散布装置を試作してその効果を検証した.温湯浸漬処理による灰色かび病接種試験の結果,50℃ 20秒の処理は,これまで最適条件とされてきた40℃ 120秒の処理と同等の抵抗性誘導効果を示した.そこで,LPガス給湯器を主構成とし,散布ノズルを保温カバーで覆った温湯散布装置を試作し,キュウリ幼苗に葉温が最高50℃となるように処理を施した.その結果,本装置を用いた処理により,全身獲得抵抗性のシグナルを伝達する葉中サリチル酸含量は増加し,病害抵抗性関連遺伝子であるペルオキシダーゼ遺伝子の発現レベルが上昇した.灰色かび病接種試験では,抵抗性誘導剤として知られるBITと同程度の抵抗性を示した.以上の結果から,これまでの報告より高温・短時間である50℃ 20秒の熱ショックにより,キュウリ幼苗に灰色かび病抵抗性を誘導でき,また温湯散布処理による熱ショックにおいても効果があることが確認されたことから,連続一斉処理技術の開発が可能であると考えられた.

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© 2012 園芸学会
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