Journal of Applied Glycoscience
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焙焼デキストリンからの難消化性デキストリンの調製
大隈 一裕松田 功
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2003 年 50 巻 3 号 p. 389-394

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抄録

 市販の各種澱粉分解物の難消化性成分含量について検討した.酸一酵素分解,また,酸分解のマルトデキストリンや水アメは,酵素分解物のそれらと比較して難消化性成分を多く含有することが判明した.しかも,酸分解の進行に伴って難消化性成分含量は増加した.一方,焙焼デキストリンについては,粉体の黄色化の亢進に従い難消化性成分が増加した.また,ブリテッシュガムのような無酸で調製した焙焼デキストリンより塩酸を添加したものの方が多くの難消化性成分を有していた.これらの結果から,熱分解中に逆合成や転移が起こり糖鎖の構造が変化する.そして難消化性の成分ができる.また,難消化性成分の生成の要因となる逆合成や転移は酸により促進されることが示された. 難消化性成分の工業的生産方法では,まず,原料としての焙焼デキストリンの調製方法について検討した結果,難消化性成分含量の増加は反応時間に依存していた.難消化性成分含量と粉体の着色度(白度)には強い相関があり,品質管理上も測定の容易な白度が利用できることが確認された.また,難消化性成分の分子量に及ぼす影響を酸量,加熱時間,加熱温度で調査すると加熱温度に強い相関があり,温度の上昇に伴って分子量の増加が確認された.そして,筆者らは,以下のような製造工程を確立した. 1)澱粉の酸による焙焼2)水に溶解後,α-アミラーゼ,グルコアミラーゼによる加水分解,3)活性炭,イオン交換樹脂による精製,4)アミラーゼ処理により生成したブドウ糖と難消化性成分のクロマト処理による分離分画,5)難消化性成分を濃縮後,スプレードライヤ`.による乾燥により90%以上の難消化性成分を有する粉体が調製される. この方法で製造された難消化性成分を難消化性デキストリンと称することを提案した.また,コーンスターチを原料とした難消化性デキストリン製造方法を馬鈴薯澱粉に適用したところ,ほぼ同等の特性を有する難消化性デキストリンが調製された.

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© 日本応用糖質科学会
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