1998 年 51 巻 2 号 p. 108-114
直腸の粘膜脱症候群は,比較的まれな疾患であり,肉眼的に直腸癌と粉らわしい症例もある.今回われわれは,直腸の粘膜脱症候群15例16病変について臨床病理学的に検討を行った.15例の内訳は,男性11例,女性4例で,肉眼的形態は隆起型13病変(81.3%),潰瘍型2病変(12.5%),colitis cystica profunda 1病変(6.2%)であった,14症例(93.3%)に脱肛を認めた.また排便時のいきみ,便秘や下痢,1回の排便時間が長い,排便回数が多いなどの排便障害が多く認あられた.治療は,排便コントロールが重要であり,外科的切除術後であっても,再発の予防のためには食事指導や整腸剤の投与なども考慮する必要がある.