日本植物病理学会報
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ユリから分離されたCitrus Tatter Leaf Virus
井上 成信前田 孚憲光畑 興二
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1979 年 45 巻 5 号 p. 712-720

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抄録
1975年6月福岡県宗像郡宗像町で採集した(露地栽培)テッポウユリの頂葉が黄緑化し,生育の悪い病株からウイルスを分離して諸性状を調べたところ,ユリでは未記録のcitrus tatter leaf virusと同定された。
1. 本ウイルスは汁液接種により12科38種に接種し,11科33種に感染したが,C. quinoaには激しい萎縮とモザイクの特徴ある症状を生じ,テッポウユリや他の多くの植物に無病徴感染した。
2. 本ウイルスはモモアカアブラムシによって伝搬されなかったが,テッポウユリやC. quinoaでは種子伝染した。
3. 罹病植物粗汁液中でのウイルスの不活化限界は耐熱性65∼70C,耐希釈性10-4∼10-5,耐保存性4∼8日(20C)であった。
4. ウイルス粒子は長さが約650nm,幅が約12nmの屈曲のあるひも状であった。粒子はPTA染色により横縞のらせん構造が認められ,そのらせん間隔は約3.8nmであった。
5. 本ウイルスに対する抗血清はCTLVとよく反応し,本ウイルスとカンキツから分離されたCTLVとは血清学的に同一であった。
6. 罹病C. quinoa葉の超薄切片像には篩部細胞内にウイルス粒子の散在または集塊が認められたが,他の葉肉細胞には認められなかった。
7. CTLVはカンキツのウイルスとして知られているが,草本植物で発生が確認されたのは本報告が最初である。
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