日本臨床外科学会雑誌
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症例
止血困難で直腸切断術を要した出血性直腸潰瘍の1例
永原 央小川 正文笠原 洋
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2007 年 68 巻 11 号 p. 2822-2826

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抄録

症例は71歳, 男性. 糖尿病性慢性腎不全で血液透析維持中に下肢閉塞性動脈硬化症悪化で入院し, 突然の大量血便を生じた. 大腸ファイバースコピーで直腸に, 底部露出血管から拍動性出血持続の潰瘍病変を認め, 急性出血性直腸潰瘍 (acute hemorrhagic rectal ulcer, 以下AHRU) と思われた. 当初の出血はclippingで止血したが, 2日後に再出血し, 腰椎麻酔下, 経肛門的に病変周囲の刺通結紮止血術を行った. 以後も出血が反復し, 最終的には止むを得ず, 腹会陰式直腸切断術を施行した. 手術直後は順調な経過であったが, 術後5日目に肺梗塞を併発し, 翌日に永眠された. AHRUは比較的稀な疾患とされ, その発症には種々の基礎的因子が関与し, それらは手術侵襲へのリスクでもある. したがって, 同病変の止血には種々の局所的処置が主体とされているが, 今回, 止血がきわめて困難で直腸切断術を選択した1症例について報告した.

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© 2007 日本臨床外科学会
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