播種工によく用いられる湿潤貯蔵型木本種子であるネズミモチ, コナラ種子の劣化は, 草本種子と同様に内生アセトアルデヒドによるタンパク質や核酸変性誘発以外に, それらには認められていない酸素呼吸促進が関わっていることが最近分かってきた。ここでは, この現象が他の湿潤型種子にも普遍的であるかシラカシ, シャリンバイおよびヤブツバキを用いて調べた。全ての種子はアセトアルデヒドの前処理によって劣化したが, 貯蔵養分を糖質とするシラカシでは, アセトアルデヒドによる呼吸促進が認められたが, 多糖類を含むがポリフェノールも含むシャリンバイと脂肪種子のヤブツバキでは, 酸素呼吸促進効果が認められなかった。よってアセトアルデヒドが呼吸促進を介して種子劣化に働くものは糖質を貯蔵成分とする湿潤種子に限られることが分った。