日本透析医学会雑誌
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原著
透析患者における心房細動の臨床的特徴
藤井 秀毅吉矢 邦彦金 鐘一阿部 貴弥梅津 道夫深川 雅史
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2007 年 40 巻 2 号 p. 169-175

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抄録
心房細動を持つ透析患者の特徴について検討を行った. 対象は外来透析療法を施行されている心房細動を有する患者29例 (心房細動群) とこれらと透析歴に差がない正常洞調律の患者30例 (コントロール群) であった. これら2群に関して, 血液データ, 患者背景を調べ比較検討を行った. さらに心房細動のタイプにより比較検討を行った (慢性心房細動 : 12例, 一過性心房細動 : 17例). 心房細動群ではコントロール群に比して, 年齢 (p=0.040), 左房径 (p=0.001), 弁膜症の合併率 (p=0.023), 脳梗塞の合併率 (p=0.003) が有意に大きく, アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE-I), アンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) の投与率 (p=0.017) が有意に低かった. 心房細動のタイプによる比較では, 慢性心房細動の方が透析歴 (p=0.049) が有意に長く, 左房径 (p=0.019), 弁膜症の合併率 (p=0.001) に関しても有意に大きかった. また慢性心房細動群で脳梗塞を発症した症例は抗血栓療法が不十分であり, 一過性心房細動群で抗不整脈薬を投与されている症例のリズムコントロールは不良であった. 以上より, 透析患者における心房細動発症には年齢, 透析期間, 弁膜症の関与が考えられた. また, その管理においてはリズムコントロールは困難であり, 発症抑制にはACE-I, ARBの投与が関係している可能性が推測された.
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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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