抄録
症例は70歳女性.頻回の動悸発作にて救急外来受診.頻拍時の心電図は,II,III,aVFで陰性の逆行性P波を認めるLong RP’頻拍であった.今回アブレーション目的に入院.電極カテーテル挿入時のカテ刺激にて容易に頻拍が誘発され,narrow QRS頻拍,1 : 1 完全右脚ブロック(CRBBB : complete right bundle branch block)頻拍,2 : 1 narrow QRS頻拍を伴っていた.すべての頻拍中の心房波の最早期興奮部位はCS ostiumであった.2 : 1 narrow QRS頻拍では,His束上ブロックを認め,下位共通路の存在が示唆された.心室頻回刺激にて,jump upを認め,逆行性心房波の最早期興奮部位がHis束からCS ostiumに移行すると同時に,頻拍が誘発された.以上の所見より,非通常型房室結節リエントリー性頻拍と診断し,3回目の通電にて頻拍は停止した.通電後すべての頻拍が誘発されなくなったため,すべて同一の回路による頻拍と推察された.房室結節リエントリー性頻拍で1:1完全右脚ブロックと2 : 1房室ブロックを同時に認めた原因については,緊張による交感神経の興奮で頻拍が非常に速くなり,右脚および下位共通路の有効不応期に相当したためと考えられた.