栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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食品中に含まれる24種の元素量および1日の元素摂取量について
寺岡 久之森井 ふじ小林 純
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1981 年 34 巻 3 号 p. 221-239

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抄録

1975年より1979年の間に全国各地と岡山県内のスーパーマーケットより156種の食品を集め, エミッション・スペクトログラフ法によって, これらの試料中に含まれる24種の元素を分析し (KとNaは原子吸光法による), 次のような結果を得た。
1) PbとNiは, Pbが野菜にやや高濃度であることを除けば, ほとんどの食品に一様に分布していた。
ZnとCuは肉, 魚介, 穀物などの酸性食品に著しく高濃度であり, とくにZnは酸性食品に多量に含まれるPとの間に顕著な濃度相関が認められた (r=0.71, n=155, p=0.1%) 。
Mn, B, Sr, Ti, Ba, V, Mo, Si, Alなどは野菜などのの植物性食品に高濃度に分布していた。とくにMnは穀類に, B, SrおよびAlは海藻に多く含まれていた。
Agは貝類ときのこ類に, Cdは貝類と牛, 豚の肝臓に, Co, SnおよびCrは貝類のみに検出された。このように, 貝類には多くの重金属が濃縮されている傾向が認められた。
2) 香川によって提唱された〔四つの食品群〕をもとに軽い労作の成人男子1人1日当たりの摂取量を算出すると, 表8に示したように, K3, 200mg, P 1, 200mg, Mg 300mg, Ca 660mg, Na 380mg, Fe 14mg, Si 41mg, Zn 15mg, Mn 3, 700μg, Al 4, 500μg, Cu 1, 600μg, B 1, 000μg, Sr 1, 000μg, Pb 220μg, T1 380μg, Ba 430μg, Ni 190μg, V 230μg, Mo 150μgという結果が得られた。
これらの元素のうち, Ca, Mg, Fe, Zn, Cu, Pbなどは, 他の研究者によって得られた結果とおおむね一致しているが, Mnのように大きな差違の見うけられる金属もあった。この差違の多くは献立の違いによって生じると考えられる。今後とも食品中の微量重金属含有量のデータがより多く蓄積され, その摂取量の究明が望まれる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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