日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ダイコンの予備加熱による硬化現象機構について
真部 孝明
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1980 年 27 巻 5 号 p. 234-239

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抄録

ダイコンの予備加熱に伴う水煮後の硬化現象を主としてぺクチン質の変化とカチオンの組織からの溶出の点から検討した。
(1) 硬化現象を促進する予備加熱の最適温度は55℃前後に存在し,処理時間は2時間まで硬度の増大がみられた。
(2) ぺクチンエステラーゼ粗抽出液の活性は, 50~60℃で最大で, pH8.5前後で最も高かった。この最適温度は最大硬化を起す予備加熱温度と一致した。
(3) 予備加熱によって,水溶性ぺクチン画分が減少し,熱水可溶性及び酸可溶性ぺクチン画分の比率が増大した。また,予備加熱に伴ってペクチン質のエステル化度の低下がみられた。
(4) 予備加熱時の温度が50℃以上になると,浸漬水へのカリウムイオンの溶出が著しく,カルシウムおよびマグネシウムイオンの溶出よりも遙かに大きかった。
以上のことから,ダイコンの予備加熱に伴う水煮後の硬化現象は,まず組織内のカリウムイオンの移動が起り,本来不活性であったペクチンエスラーゼが活性化し,組織内に存在するペクチン質の脱メチル化を促し,共存する組織内の二価カチオンが遊離したカルボキシル基と結合して硬化すると結論した。

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