日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
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  • 藤田 哲, 鈴木 篤志, 河合 仁
    1994 年 41 巻 12 号 p. 859-864
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    食品O/Wエマルションの安定化のためには,タンパクと界面活性剤の間の質的・量的関係が最も重要な因子であることを,著者らは経験的に把握してきた.大豆リゾリン脂質や,リゾリン脂質と不飽和脂肪酸との混合物である大豆リン脂質のホスフォリパーゼA-2分解産物は,タンパクを含むエマルションの安定化に有用である.本報告では,pH中性領域で,界面活性剤としての大豆リゾリン脂質などとカゼインナトリウムの相互作用について検討した.中性脂質である大豆リゾボスファチジルコリンや非イオン界面活性剤のショ糖脂肪酸エステルでは,タンパク/界面活性剤間に結合が認められず,cmc以上の濃度ではタンパクは界面から完全に排除された.酸性の脂質である大豆リゾリン脂質では,タンパクとの複合体が形成された.タンパクへの酸性脂質の結合サイトがなくなり,さらに脂質(界面活性剤)の量が増加するとタンパクは界面から完全に脱離した.
    タンパクとリゾホスファチジルコリンまたは非イオン性界面活性剤からなるエマルション系では,タンパクに対する界面活性剤比率が高まるとエマルションの安定性が低下する.しかし,タンパクと大豆リゾリン脂質のような酸性脂質を含むpH中性のエマルション系では,タンパクに結合した界面活性剤量が適当であり,タンパクが疎水性を増し,そのアシル基でタンパクが油水界面に強固に吸着されることで,エマルションはより安定性を増すものと考えた.
  • 吉野 典生, 新居 佳孝, 平田 孝
    1994 年 41 巻 12 号 p. 865-870
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    キャピラリーガスクロマトグラフィーによる窒素,酸素,二酸化炭素及びアルゴンの常温同時分析を行うため分析システムを設定した.
    (1) PoraPLOT QとMolsieve 5A PLOTを分流並列方式に構成し,フューズドシリカキャピラリーチューブを用い分流比を調整することで, 4種無機ガスを分離できた.
    (2) 検量線を作成した結果,酸素は0.1%まで,二酸化炭素は0.02%まで定量可能であった.
    (3) 検量線を用いないで4種無機ガスの濃度を計算で求めるため, μ-TCD温度100℃における4種無機ガスの相対感度を求めた.この相対感度で補正することで空気の分析結果は標準値にほぼ一致した.
    (4) 脱酸素剤を封入した袋内およびピーマンをポリエチレンフィルムで密封した袋内の雰囲気を本システムを用い分析した結果,酸素濃度を約0.1%まで測定することができた.
    (5) 以上の結果から,本分析システムにより脱酸素剤封入包装袋内やMA包装袋内等の低酸素領域を含めた包装袋内の雰囲気の測定,評価が可能なことが確認できた.
  • 伊藤 友美, 吉尾 信子, 寺西 克倫, 久松 眞, 山田 哲也
    1994 年 41 巻 12 号 p. 871-877
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    炊飯過程に溶出する成分の加熱時間による微細構造の変化とモノグリセリド添加が炊飯時澱粉の微細構造に及ぼす影響について検討した.
    (1) 炊飯液の上澄み区分及び沈澱区分の糖量は炊飯時間とともに増加した.
    (2) 上澄み区分は,はじめ加熱によりグルコース,マルトース等の低分子が溶出してくるが,沸騰後では高分子のアミロースやデキストリンが増加した.
    (3) 沈澱区分は,はじめアミロペクチンのような高分子が溶出するためアミロース含量は減少するが,沸騰後はむしろ増加した.これはアミロースの他,加熱によりアミロペクチンから分解された低分子も含まれていることが明らかとなった.
    (4) モノグリセリド添加した炊飯10分後の炊飯液を無添加と比較した.モノグリセリド添加の影響は沈澱区分に見られ,モノグリセリド添加の方が無添加よりアミロース含量が低かったが, DMSO処理をするとモノグリセリドを添加した沈澱区分及び無添加の沈澱区分のアミロース含量値の差は縮まった,この結果から,モノグリセリドを添加した沈澱区分には,アミロースーモノグリセリド複合体が形成していると考えられた.このことは,前報1)で認められたモノグリセリドを添加して炊飯した場合の米飯の物性の変化は,炊飯液沈澱区分のアミロースーモノグリセリド複合体が炊飯時に米の表面層に再吸収されることにより引き起こされるという仮設を裏付けるものである.
  • 芳川 憲司, 池田 潔昭, 谷川 弘晃, 山本 一也, 宮本 博文, 岡田 茂孝
    1994 年 41 巻 12 号 p. 878-885
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    (1) α-EGの工業的大量生産に用いる酵素剤を検索した結果,弱いα-EG合成能を示す糖化型α-アミラーゼ,グルコアミラーゼと酵母由来のα-グルコシダーゼに加えて, Aspergillus属由来のα-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼ)2品が顕著なα-EG合成能を示すことが明らかとなった.これらのうちトランスグルコシダーゼL「アマノ」からの精製酵素を用いても同様の結果が得られたことから, Aspergillus属由来のα-グルコシダーゼが高濃度エタノール中でのα-EG大量生産に適していることがわかった.
    (2) 市販酵素剤(トランスグルコシダーゼL「アマノ」)を用いたα-EG大量生産のための最適反応条件を,反応生成物のα-EG/G値(モル比率)とα-EG収率を指標にして決定した.決定した最適反応条件とは,基質濃度: 10%,エタノール濃度: 60%,反応温度: 45℃,酵素量: 6.6U/g・基質,反応時間: 24時間,反応pH: 6.0(脱イオン水),基質:オリゴトース(液状品),振邊: 200rpmである.
    (3) 上記の条件で工業的に大量生産するための製造フローが確立された.またそのようにして製造されたα-EGシラップは,全糖量が51.3% (α-EG: 25.1%,グルコース: 23.7%,その他オリゴ糖: 2.5%)でエタノール濃度が1.0%以下の組成品であった.
    (4) α-EG又はα-EGシラップの安全性に関する突然変異性試験と急性毒性試験結果は陰性であった.
    (5) α-EGを魚肉や獣肉を使った食品の加熱調理に0.5~2.5%添加することで,素材の持つ魚臭や獣臭といった生臭みを抑える消臭(矯臭)効果や塩味を和らげたり,全体の味をまろやかにする味質改善効果が得られることが明らかになった.すなわちα-EGを約25%含むα-EGシラップにも同様に,食品素材の風味(臭い,味)を改善し,その結果として食品の持っ旨味を引き立てる効果があると考えられる.
  • 恩田 匠, 阿部 英幸, 松永 暁子, 小宮山 美弘, 河野 澄夫
    1994 年 41 巻 12 号 p. 886-890
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    デンプンの糊化による構造変化および糊化度の近赤外法による計測について検討を行い,以下の結果を得た.
    (1) 糊化度の異なるデンプンの近赤外吸収スペクトルを調べたところ, 1204, 1368, 1436, 170O, 1748, 1784,1924, 2088, 2280, 2320および2348nm近傍の吸収度の変動(分散)が大きかった.特に, 2088および2280nm近傍のスペクトルは,糊化の進行に伴い複雑な変動を示した.
    (2) BAP法の糊化度またはデンプンの粒度をそれぞれ目的変数とし,吸光度の2次微分値を説明変数とする回帰分析を行ったところ,ともに1807および2095nmで高い相関が得られた.
    (3) デンプンの吸収帯が存在しないことから, 1807nmにおける高い相関は,その原因の1つとして粒度などの物理的な要因に基づくものと考えられた.(4) 糊化度と粒度の間には,高い正の相関(r=0.96)が認められた.糊化度が進むにつれて,デンプンの粒子が大きくなるものと考えられた.
    (5) 2100nm近傍のスペクトルデータは,粒度などの情報とデンプンの構造変化の情報が重なっていることから,主成分分析により,情報の分離を行ったところ,得られた第2主成分スコアと糊化度との間に高い直線性(r=0.98)が認められた.
    以上のことから,近赤外法によりデンプンの糊化度を計測できることが明らかとなった.
  • 川副 剛之, 湯浅 克己, 山崎 昌良, 安藤 幹男
    1994 年 41 巻 12 号 p. 891-896
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ビタミンD2強化シイタケを産卵鶏に給与することにより,ビタミンD強化卵の作出を検討した.
    (1) 強化シイタケ中のビタミンD2は,卵黄中に移行することを三段階のHPLC分析により確認した.卵黄中のビタミンD量(ビタミンD2とビタミンD3を合わせた量)は, 7日間まで急激に増加していき,その後も28日目まで徐々に増加した. 0.4%添加区, 28日目で卵黄中のビタミンD量は, 14.5IU/g,コントロールの約10倍,移行率は8.9%であった.
    (2)強化シイタケの添加量と卵黄中のビタミンD量は比例関係にあり,任意のビタミンD量の卵が作出可能であった.
    (3) 強化シイタケ給与による,産卵成績,卵殻質,血漿中のカルシウム,リン濃度への影響は認められなかつた.
  • 高井 陸雄, 鈴木 徹, 三堀 友雄, 陳 正宜, 発地 由美子, 小嶋 秩夫
    1994 年 41 巻 12 号 p. 897-903
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    かまぼこ内部に存在している気泡の状態を汎用の金属用の超音波探傷器を使用し, 1プローブ法によって検査する方法を検討した3試料には市販のかまぼこを5種類使用した.以上の実験の結果,以下のことが明らかになった.
    1) かまぼこの音響インピーダンスは水とほぼ等しいため,かまぼこ内部の気泡の界面で音波はほぼ完全に反射する.このため,かまぼこ内部に存在する気泡の有無,大小を超音波パルスエコー法によって非破壊的に検査することが可能であった.
    (2) 超音波オッシログラム上から読み取れるパルスの個数とかまぼこ内部に存在している気泡数との間には複雑な関係があるものの,気泡数が少ない場合にはパルスの個数も少なく両者は比例関係を示した.しかし,気泡数の増加とともにパルス数は一定値に飽和し,気泡数の計測は困難となった.このような関係は簡単なモデルによる計算からも明らかになった.このような手法によって気泡の数を正確に求めることは困難ではあるものの,プローブ径,試料の厚さを選択する事により気泡の多少を非破壊的に検査可能であることがわかった.
  • 吉田 博, 藤本 水石
    1994 年 41 巻 12 号 p. 904-907
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    要約菌床栽培ホンシメジの一般成分,低分子炭水化物,有機酸,遊離アミノ酸,核酸組成について検討した.水分含量は88.8%であり,乾燥重量当たり,粗タンパク質は30.4%,粗脂肪は4.0%,灰分は8.0%,炭水化物は57.7%であった.低分子炭水化物含量は14.6%であり,トレハロース,グルコース,マンニトール,アラビトールおよびグリセロールが検出され,主成分はトレハロースであった.有機酸含量は3.8%であり,主成分はリンゴ酸,クエン酸,フマル酸およびコハク酸であった.遊離アミノ酸含量は2.9%であり,主成分はグルタミン,オルニチン,アルギニン,アラニン,グルタミン酸およびグリシンであった. 5'-GMP含量は0.31%であった.
  • 恩田 匠, 辻 政雄, 小宮山 美弘
    1994 年 41 巻 12 号 p. 908-912
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    近赤外法により,スモモ果実の糖度,酸度および硬度の非破壊定量を検討した結果,以下の結果が得られた.
    (1) スモモ果実の近赤外吸収スペクトルは,高水分食品の典型的な形状を示した.
    (2) 糖度検量線の精度は, R0.92, SEE0.41゜BrixおよびSEPO.61゜Brixであり,高い精度であった.酸度検量線の精度は, R0.78, SEE0.11, SEP0.14であり,硬度検量線は, R0.83, SEE0.11kgおよびSEP0.21kgであった.
  • 東出 敏男, 奥村 一, 川村 吉也, 久松 真, 山田 哲也
    1994 年 41 巻 12 号 p. 913-920
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    (1) 高酸度食酢の生産に実用化されている酢酸菌(A. polyoxogenes)を用いて,効率的な高酸度食酢の製造条件を検討した.
    (2) 高酸度の醗酵には流加培養が効果的であった.
    (3) 酢酸による醗酵阻害の程度が従来の醗酵条件における酸度15%の場合と同程度に維持されれば,蓄積酢酸量から最終到達酸度は23%になることが示唆された.
    (4) 酸度12%における最適醗酵温度は28-29℃であり,酸度12%以上では徐々に冷却しながら最終的に15℃まで低下させた時がより高酸度の食酢製造のために最も良好な結果を示し,最終酸度は21.75%に達した.
  • 中国の金華火腿に関する研究(第1報)
    和久 豊, 角田 潔和, 進藤 斉, 小泉 武夫
    1994 年 41 巻 12 号 p. 921-926
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    中国の発酵食品である金華火腿の成分分析及び微生物の分離を行った.
    (1) 金華火腿の水分は23.9%と低い値であった.蛋白質含量は23.7%,脂質含量は44.3%であった.ヒ素・重金属含量も極めて低い,重金属に関しての問題は無いと考えられた.
    (2) 全アミノ酸の組成は対照と比べ大きな差は認あられなかった.しかし,火腿の遊離アミノ酸量は対照の1.6倍と多く,その中でもグルタミン酸の遊離量が464mg/10kgと多くなっていた.また, 5'-イノシン酸も対照の約4倍含まれていた.これらの含有量が高いことが,だしとして使用される理由の一つと考えられた.
    (3) 火腿からはアフラトキシン(G1, G2, B1, B2),オクラトキシンA,パツリン,ゼアラレノンなどのマイコトキシンは検出されなかった.
    (4) 火腿表面より分離した微生物は糸状菌が最も多く,続いて細菌・酵母の順となった.
  • 渡辺 満, 松倉 潮, 今井 徹
    1994 年 41 巻 12 号 p. 927-932
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    オリゴ糖誘導体を基質としたα-アミラーゼ活性測定法によるアミロ値迅速推定および低アミロ小麦の仕分けの可能性を検討した. 1) 穂発芽性の異なる4品種と1銘柄の小麦から様々なアミロ値の小麦粉を調製し, α-アミラーゼ活性とアミロ値との相関関係を求めた.その結果,いずれの品種・銘柄においてもα-アミラーゼ活性とアミロ値の対数の間には,高い負の相関関係が存在した.従って,各々の品種においては, α-アミラーゼ活性からアミロ値の推定が可能である. 2) 両者の回帰式は品種・銘柄により若干異なるが,アミロ値が小さいほどα-アミラーゼ活性の品種・銘柄間の差異は小さかった.3) 得られた結果に基づきα-アミラーゼ活性による小麦仕分け案を作成した. 4) 実際の様々なアミロ値を持つ小麦に試案を適用した結果,仕分け案の妥当性が確認された.
    本酵素法はアミログラムの測定と比較して迅速な分析が可能であり,低アミロ小麦の推定法として有用であることが示された.
  • 香西 みどり, 畑江 敬子, 島田 淳子, 飯渕 貞明
    1994 年 41 巻 12 号 p. 933-941
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    野菜の加熱による硬化・軟化過程を速度式に基づいて数式化し,時間および温度依存性を明らかにした.試料はダイコン,ニンジン,ゴボウおよびジャガイモとした.次の2つを仮定して速度論的モデルをたてた. (1)ペクチンは加熱と共に3つの形(未変化ペクチン,硬化ペクチンおよび軟化ペクチン)に変化する. (2) 3種のペクチンの各々が硬さに影響し,硬さはそれらの和で表せる.硬化の原因を酵素によるペクチンの脱メチル化,軟化の原因をペクチンのβ脱離として硬化,軟化および酵素失活に対して,各々一次の反応速度式を適用した.各速度定数を対応する温度範囲における実験値を用いて最小自乗法により求めた.計算による硬さの値は実験値とよく一致した.本式により硬化・軟化過程が同時に表現され,速度パラメーターによって適度な硬さに達するまでの最適加熱時間が算出された.硬化の速度定数は低温域(54-63℃)ではアレニウス型を,高温域(70-99.5℃)では非アレニウス型を示した.高温域では硬化の反応の機構が複雑であることが示唆された.
  • 平成6年度技術賞
    小原 忠彦
    1994 年 41 巻 12 号 p. 942-952
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
  • 藤本 健四郎
    1994 年 41 巻 12 号 p. 953
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
  • 藤本 健四郎
    1994 年 41 巻 12 号 p. 954-956
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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