日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
油揚生地の伸展におよぼす原料豆乳中の空気量
油揚製造に関する研究(第1報)
橋詰 和宗池田 徹斎尾 恭子
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 31 巻 6 号 p. 389-394

詳細
抄録

控目に加熱した豆乳から作った豆腐は,油で揚げると約3倍に伸展するが,長時間加熱した場合には,まったく伸展しなくなる。この機構を解明するための実験を行い,以下の結果を得た。
(1) 豆腐を油で揚げた場合,伸展するに必要な最低温度は85℃であり,これは11Sたんぱく質の変性温度とほぼ一致した。
(2) 長時間加熱した豆乳からつくった油揚生地が伸展しなくなる主な理由は,豆乳中に含まれていた空気が加熱によって減少したためと推察され,加熱後空気を補うことにより伸び率の回復が見られた。豆乳中の空気は,凝固の際気泡となって析出し,豆腐に取込まれる。この気泡は,油で揚げる際に豆腐の中に徐々に水蒸気を発生させ,ゲルを膨化させるために必要な沸騰石の役割を果していると思われる。
(3) 豆乳を長時間加熱した場合,あるいは高温で凝固した場合に油揚の伸び率は低下し,空気量の減少以外の要因も無視できないことが認められた。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top