抄録
姿勢の保持やロコモーションにおいて重要な役割を果たす人間の下肢筋群には羽状筋が多く, 大きな力を発揮すると同時に, 収縮中に長大な腱を伸長させる. このため, 関節の動きと筋線維動態は一致しない. 本稿では, 運動中の筋線維動態とその機能的意義について, 人間の骨格筋における生体計測の結果を基に解説した. 反動をつけてジャンプを行う場合, 筋線維は活動中に効率·発揮筋力の高い等尺性筋活動を維持し, 腱組織の伸長によって蓄積された弾性エネルギーを利用することによってパワーを増大させる. ランニングや歩行においても同様の筋-腱相互作用が生じ, このことによって高い運動効率が達成される. 主動筋の筋線維を効率よく, 効果的にはたらかせるようなタイミングのコントロールの善し悪しが運動パフォーマンスの巧拙や運動中の傷害の発生と関係していることが予想される.