2011 年 26 巻 4 号 p. 524-530
症例は60才代女性.2007年5月膵体尾部癌の腹膜播種に伴う腸閉塞の診断にて腸閉塞解除目的に開腹術を施行した.術中腹水細胞診にてClass V,腸閉塞の責任病変である小腸を部分切除し,病理診断は転移性腺癌であった.術後S-1+Gemcitabineの化学療法を合計13サイクル施行した結果,腫瘍はCT上縮小したが,腫瘍マーカーは10サイクル目以降やや増加傾向に転じた.2008年8月再手術を施行.播種性病変は認めず術中腹水細胞診はClass Iであった.横行結腸,胃の部分切除を伴う脾合併膵体尾部切除術を施行した.病理診断では浸潤性膵管癌,pT4pN0M0 Stage IVaであった.2009年10月に施行したFDG-PETにて子宮体部に異常集積を,更に右尿管閉塞に伴う右水腎症を併発し後腹膜へ広がる再発と判断した.初発後3年3ヶ月経過した2010年7月に永眠された.切除不能膵癌症例の予後向上において化学療法から外科的切除へ向かう新たな治療展開につき適応と時期の検討の必要性を示唆する症例であった.