日本薬理学雑誌
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ミニ総説号 「抗肥満症をめざした創薬: 過去、現在、未来への展望」
中枢性モノアミン制御系
深川 光司坂和 利家
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2001 年 118 巻 5 号 p. 303-308

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抄録

脳内モノアミン, つまりカテコールアミン, ドパミン, セロトニン(5HT), ヒスタミンなどが挙げられるが, これらの含有ニューロンは食欲を調節する神経回路網を形成する. これらの食欲調節系を制御する抗肥満薬が長年月を掛けて開発され, 臨床でも使用されてきた. 現在, 欧米で市販されている脳内モノアミン作動薬には, β-アドレナリン受容体作動薬と5HT受容体作動薬がある. 5HT作動薬のdexfenfluramineは肺高血圧症や心臓弁膜症を起こす事から, アメリカでは1997年に使用禁止になった. これらの副作用はsibutramineのような5HTの再取込み抑制薬では認められない. カテコールアミン作動薬のamphetamineは体重を減少させるが, 習慣性や乱用の危険性がある. 同じ系列に属すdiethylpropionはカテコールアミン作動薬ではあるが, 副作用の発現が少ない. Mazindolは現在のところ本邦で使用できる唯一の抗肥満薬である. カテコールアミン分泌を促進する作用がないため, 薬物依存性や覚醒作用はほとんど認められない. アドレナリンと5HTの両モノアミン作動薬としてsibutramineがある. Sibutramineとその代謝産物は, これらモノアミンの再取込みを阻害するので食欲の抑制作用がある. 加えて, 褐色脂肪組織のβ3-アドレナリン受容体を活性化し, 間接的に熱産生を刺激する作用がある. 我が国でも現在臨床試験が行われている. 中枢性モノアミン制御系の抗肥満薬を今後開発するには, 1)減量効果が大きい, 2)副作用が少ない割には安全性が高い, 3)リバウンドが小幅にとどまる, 4)耐性が出来難い, 5)末梢でのエネルギー消費を亢進させる, こういった性状を備えた創薬が望まれる. その意味では, ヒスタミンの前駆物質であるL-ヒスチジンは以上の要件を満たす. 抗肥満薬を対象にする場合, その創薬のコンセプトには薬物としての食事という思考法も含まれてよい.

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