日本薬理学雑誌
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ミニ総説:アレルギー性炎症治療戦略の最前線―基礎から臨床まで―
モルモットアレルギー性鼻炎モデルを用いた鼻閉の発症機序の薬理学的解析
奈邉 健水谷 暢明河野 茂勝
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2005 年 125 巻 5 号 p. 271-277

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抄録

:アレルギー性鼻炎はくしゃみ,鼻汁分泌亢進および鼻閉を主症状とする典型的なI型アレルギー疾患である.くしゃみおよび鼻汁分泌は抗ヒスタミン薬で強く抑制されるが,患者にとって最も苦痛を強いる鼻閉の治療にはグルココルチコイドが繁用され,これに代わる鼻閉の治療薬が望まれる.我々はスギ花粉を抗原としたモルモットアレルギー性鼻炎モデルを作成し,主として抗原惹起後に誘起される2相性の鼻閉ならびに抗原以外の刺激に対する鼻過敏症の発症メカニズムについて解析し,有効な治療薬の候補について検討した.遅発性の鼻閉はシステイニルロイコトリエン(CysLTs)ならびにトロンボキサン(TX)A2の受容体拮抗薬で強く抑制された.また,低濃度のLTD4およびTXA2類似薬,U-46619の点鼻は感作-惹起動物において相乗的に鼻閉を惹起することから,これらのアラキドン酸代謝物は鼻粘膜の効果器において相乗的な作用で遅発性の鼻閉を惹起している可能性が示唆された.鼻過敏性の発症はB1およびB2受容体に対する拮抗薬で抑制され,さらにこれらの受容体のアゴニストであるdes-Arg9-カリジンおよびブラジキニンの点鼻は感作-惹起動物においていずれも鼻過敏症を惹起することから,本鼻炎症状の発症にはキニン類が大きな役割を演ずる可能性が示唆された.実際の鼻アレルギー患者では,抗原惹起が繰り返され,2相性の鼻閉と鼻過敏症がオーバーラップして発症していることから,これらの鼻閉をコントロールするためには,アラキドン酸代謝物の作用を抑制することに加えて,キニン類の作用を阻害することが有効である可能性が示唆された.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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