北海道渡島半島北部を流れる朱太川水系の氾濫原の増水時に河川と連結する小水域(氾濫原調査水域)18ヶ所、およびその対照(非氾濫原調査水域)として、流域内の河川と連結しない池沼、および河川と連結してミズゴケ類の優占する貧栄養湿地の小水域各2ヶ所、ならびに地形的に流速が遅い4支川において魚類相調査を行なった。その結果、8科16種の魚類が記録された。魚類相組成の類似度にもとづく調査水域のクラスター分析の結果、氾濫原調査水域は、非氾濫原調査水域と類似するクラスター、および氾濫原調査水域のみからなるクラスターに含まれた。指標種分析によって、カワヤツメ、スナヤツメ北方種、シマウキゴリの3種が後者の有意な指標種として抽出された。氾濫原調査水域の魚類相組成は有意なネスト構造を示した。重回帰分析と正準相関分析によって、魚類の多様性に対して水表面積と水深は正の効果を、海からの河川長は負の効果を及ぼすことが示された。これらの結果をもとに、朱太川水系における魚類相の保全に資する氾濫原湿地の再生に関する具体的な提案についても論じた。