2010 年 31 巻 p. 329-341
本稿では,美術上の造形性と象徴性の理解を目的とした,対照性と類似性に着目した比較による鑑賞教育方法論について考察した。まず,教師の授業構築における作品選定の段階と,学習者の作品鑑賞の段階においてそれぞれ働く対照性と類似性について類型した。そして,教師による授業構築の方法論を意識し,授業で扱う鑑賞作品の選定の基準を示した。授業では,学習者が比較鑑賞をしながら直観と分析による思考を働かせて相違点や共通点を抽出することで,授業での学習目標の焦点化を図れることを明らかにした。加えて各類型における学習の難度の存在を示した。