抄録
多様な解釈や展開が可能なことを前提として,ワークショップには一般的に「参加」,「体験」,「グループ(協同)」といったキーワードのもと,教師の指示で何かを教えられるのではなく,ファシリテーターの案内で主体的に活動に参加し,参加者同士の交流を通して協同でアイデアを出し合い創造体験をするといった特徴がある。「グループ(協同)」の視点から共同制作に関しては,平成元年以前の美術科学習指導要領における指示型分業作業ではなく,それ以後の主体型協同活動の在り方にワークショップの理念との共通性を見出した。本研究は,コミュニティ形成を目的とするワークショップの傾向を踏まえ,プロセスの活性化を意識した協同的な表現活動を通して人と人の関係性を構築するあり方に着目し,中学校美術科教育におけるワークショップを実践した。具体的には,協同制作による物語表現の表出において,情動の交流「力動感」をもとにして,考えや価値を分かち合い「感性的コミュニケーション」,互いの繋がりを実感できる「繋合希求性」を満たした実践になったことを検証した。