抄録
本論は,子供の創造的な表現活動の構造を明らかにすることが目的である。まずは,子供の表現活動を何らかのイメージを造形記号に表す活動としてとらえ,鬼丸吉弘の描画の発達段階論を読み直した。その上で,アンリ・ベルクソンのイメージに関する理論に基づいてイメージを造形記号に表す論理を構築した。この論理から,子供が創造的な表現活動を実現するためには,二重の努力が必要であると結論付けた。一つは,思いや感覚の深みへ飛び込み,身を任せることによって複雑なイメージを形成することであり,もう一つは,試行錯誤しながら徐々にイメージを造形記号に表していくことである。