著者は人間主義的美術教育論が児童生徒内面の現在性だけを基準として構想され,教師や教育内容等の要素が無いことを批判し,贈与交換システム論的美術教育学によるその克服を提案してきた。本稿の目的は,三つの論点の検討を踏まえて,贈与交換システムの要素の構造と参照源概念を検討・導入してシステム作動を解明することである。三つの論点とは拙論の1.教師中心的実践,2.学校と非学校の境界,3.科学的論理と感性的論理である。それらの検討を踏まえて,贈与交換システムの要素の構造,特に贈与交換が水平面でのサイクルであるのに対して学習者集団と教師の構造に垂直方向に蓄積・参照される参照源の概念を導入して,システム作動の立体的構造を解明した。