抄録
本稿では,倉橋惣三の「粘土製作-幼兒の生活(二)-」(雑誌『幼兒の教育』掲載)及びその関連文献により,倉橋の粘土造形教育観について分析・考察を行った。結果,幼児の生活を軸とする倉橋の幼児教育観を基盤としつつ,当時の細工・作業的な「手技」への批判がその根底にあることが明らかになった。また,倉橋の粘土造形教育観を表す「粘土製作」概念の内容には,当時の児童中心主義的な造形活動を推進することに加えて,「芸術教育」(「児童芸術」)という観点も含まれていることが,文中の「原始芸術家」「造型製作」という用語から浮き彫りになった。以上の二点が倉橋の粘土造形教育観の主な特質・先進性と捉えられるが,これらには倉橋の美術界の新たな動向に対する鋭敏な芸術的感性が影響していると考えられる。