本研究は,園での一斉描画活動における幼児同士の応答行為と描画表現の創発過程を制約条件に着目して検討した。5歳児クラスの一斉描画活動を参与観察し,収集した録画データから幼児の応答行為を抽出しボトムアップにカテゴリ化を行った。そのなかで,「創発を促す応答行為」の分析を行った結果,幼児の応答行為の特質は,経験に基づく表現と想像に基づく表現により差異が生じることが示された。さらに,事例分析の結果,制約条件によりイメージの検討が誘発されることで,描画テーマの視点が変化しアイデアが吟味,再構成されるなか,幼児の描画表現が相互に促されることが示された。本研究の知見は,一斉描画活動における設定条件や保育者の関わりの指標となると同時に,幼児同士の関わりから生成される豊かな描画表現へ示唆を与えるものと考える。