美術教育学:美術科教育学会誌
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東京造画館の掛図に関する研究
牧野 由理
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2020 年 41 巻 p. 311-322

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抄録

本研究の目的は,印刷出版社である東京造画館の創業者である塚本岩三郎の経歴を明らかにした上で東京造画館の成立過程を探りつつ,目録の分析から東京造画館による掛図の特質を明らかにすることである。その結果,塚本岩三郎は工部美術学校において明治初期の洋画を学び,加えて石版や銅版画の技術を獲得した人物であることが明らかとなった。また東京造画館の掛図目録の分析により,明治42年には1,046枚もの掛図を販売し,理科に関する掛図が最も多いことが示された。東京造画館による掛図は多色石版で細部まで詳細に製作されていたため,子どもが実際に見たことがない異国や戦争の視覚イメージを喚起し,描くために適した教具であった。

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