抄録
小論では,同一題材に二つの実践的方法論で取り組む。それを手がかりとして彼らの鑑賞能力をどのように捉え,序列化するべきかについて考察する。新規の第二方法論で鑑賞を始める場合,能力高位者は「モチーフ・情景のあり様」からヘルメレン流美的特性の類型として自然特性を感知した。それが導き手となって「窓からの光がいっぱいでない」など自然特性的な主題を把握し,これのみが味わわれた。
従来の第一方法論では,以下の美的特性が把握された。高位者は造形的特徴から,多様な美的特性を感受した。それが引導役となることによって,「瞬間のすばらしさ」などの趣味特性的主題と,「時の流れのゆったりさ」など行為特性的主題を把握した。中位・低位者は専ら人物の表情と挙措から,「悲しみの心情」という感情特性的主題を感知するに留まった。