2021 年 42 巻 p. 67-82
本研究は「ポストミュージアム」の視点から日本におけるアートプロジェクトについて考察したものである。近代的博物館が有形資料の収集を軸としていたのに対して,ポストミュージアムでは無形文化を含む資料の活用が重視される。また,利用者とのコミュニケーションも展示に限らない多様な方法が用いられる。本稿では,その実施形態として「土着型博物館」「エコミュージアム」「アートプロジェクト」を取り上げた。さらに,アートプロジェクトを実践形式に応じて「展覧会形式の事業」「サイト・スペシフィックな野外展示」「コミュニティ・スペシフィックなプロジェクト」に分類した。特に,第三の実践モデルは人と人との対話のプロセスを通して展開されることで,構成主義的な学びが達成される。上記の分類に従い,地域社会と芸術との関係を構造化する視点を示した。